子どもの癇癪(かんしゃく)への対応方法|放デイの現場から学ぶ関わり方
発達障がいのあるお子さまに多い癇癪(かんしゃく)について、なぜ起きるのか・どう対応するかを放デイの現場経験から解説。家庭でも実践できる具体的な対処法を紹介します。
最終更新:2026年04月12日

癇癪(かんしゃく)は「わがまま」ではなく、感情をコントロールする脳の機能が発達途中または苦手なことから起きる状態です。正しい理解と一貫した対応で、頻度・強度は必ず和らいでいきます。9年間の現場経験から、効果的な対処法を解説します。
癇癪が起きるメカニズム
癇癪は、感情の「爆発」が抑えられない状態です。発達障がいのあるお子さまに多い理由は:
- 感情を調整する「前頭前野」の機能が未発達・または苦手なため
- 感覚過敏・過負荷により通常より多くのストレスを受けやすいため
- 「気持ちを言葉で伝える」スキルがまだ育っていないため
- 見通しの持てない状況や急な変化への不安が強いため
「癇癪を起こそうとして起こしている」のではなく、「調整できないから爆発している」という理解が大前提です。
癇癪が起きた時の対応
まず「安全を確保する」
お子さまが自分を傷つけたり、ものを壊したりしないよう、危険なものを遠ざける・安全なスペースに移動することが最優先です。
「刺激を増やさない」
癇癪の最中に「何でそんなことするの!」「落ち着きなさい!」と声をかけると刺激が増えて悪化することが多いです。静かに見守り、過剰に関わらないことが重要です。
「嵐が過ぎるのを待つ」
癇癪には始まり・ピーク・収束のサイクルがあります。ピーク時には何を言っても耳に入らないため、「嵐が過ぎるのを待つ」姿勢が有効です。
収まった後に話し合う
癇癪が収まり、お子さまが落ち着いてから「何が嫌だったの?」「次はどうすればよかったかな?」と穏やかに話し合います。このタイミングでの冷静な振り返りが、次回の自己調整につながります。
癇癪の「予防」が一番大切
癇癪への対応より大切なのは「起きにくくする」こと。以下の工夫が有効です。
- 活動の切り替え前に「あと5分で終わり」と予告する
- 1日のスケジュールを視覚的に提示し見通しを持たせる
- 疲れや空腹が癇癪のトリガーになることが多い→規則正しい生活リズムを保つ
- 小さな「嫌だ・困った」を早めにキャッチして言語化を手伝う
iHomeでは、開所後は個々のお子さまの癇癪のトリガーを保護者さまと共有し、予防的な関わりができるよう日々記録・分析していく予定です。「最近癇癪がひどくなった」というご相談もお気軽にどうぞ。
癇癪の記録を付けることの重要性
「また癇癪だ」で終わらせず、癇癪の「記録」を残すことで、パターンと対策が見えてきます。記録しておくと良い項目は以下のとおりです。
- 日時・場所:どの曜日・時間帯・どこで起きたか
- きっかけ:何が引き金になったか(切り替え・空腹・眠気・感覚刺激など)
- 持続時間:どのくらい続いたか
- 対応方法:どう対応したか
- 収束のきっかけ:何があると落ち着いたか
1〜2週間記録するだけで「火曜の夕方・お腹が空いた後に多い」「学校の帰宅直後に起きやすい」などのパターンが見えてきます。iHomeでも連絡帳に癇癪の情報を記入してもらい、一緒にパターンを分析していく予定です。
「ABA(応用行動分析)」の考え方
癇癪への対応に「ABA(応用行動分析)」の基本的な考え方が役立ちます。
- 先行事象(Antecedent):癇癪が起きる前にあったこと(きっかけ)を変える
- 行動(Behavior):癇癪という行動そのもの
- 結果(Consequence):癇癪の後に何が起きたか(要求が通ったか等)
「癇癪を起こせば要求が通る」という経験が繰り返されると、癇癪が「コミュニケーション手段」として定着してしまいます。癇癪中の要求は叶えないが、落ち着いた時に「こう言えばよかった」と代わりの表現を一緒に練習することが大切です。
放デイと家庭で対応を統一する
最も重要なのは、放デイと家庭で「同じ対応」をすることです。事業所で「癇癪が起きたら静かに待つ」という対応をしていても、家庭では「すぐに要求を叶えている」というギャップがあると、お子さまが混乱します。
iHomeでは、開所後は「今日の癇癪の状況と対応」を連絡帳でお知らせし、家庭でも同様の対応をお願いしていく方針です。「どうすればいいかわからない」という保護者さまには、具体的な対応手順をお伝えしています。
まとめ
癇癪は「わがまま」ではなく、感情調整が難しいというお子さまのサインです。記録を取りながらパターンを把握し、「予防」と「一貫した対応」の両輪で少しずつ改善していきましょう。iHomeでは癇癪対応の相談も受け付けています。「どうしても癇癪が減らない」という方は、ぜひご相談ください。
年齢別の癇癪の特徴と対応のポイント
癇癪はお子さまの年齢によって特徴が異なります。年齢に合った対応を知っておきましょう。
年齢 | 癇癪の特徴 | 対応のポイント |
|---|---|---|
小学校低学年(6〜9歳) | 言葉よりも体で感情を表現。床に転がる・物を投げるなど | 安全を確保しながら静かに見守る。「〇〇が嫌だったんだね」と感情に名前をつけてあげる |
小学校高学年(10〜12歳) | 言語で怒りを表現できるようになるが、暴言・叫びが出やすい | 「怒りを感じた→どう伝えるか」の練習の場として活用する。暴言には「その言い方は〇〇しよう」と代替表現を教える |
中学生(13〜15歳) | 感情のコントロールは向上するが、思春期の複雑な感情が加わる | 本人の「感情の波」を尊重しながら距離を保つ。無理に話させず、落ち着いてから対話する |
癇癪を「学習の機会」にするために
癇癪は「問題行動」ではなく、「感情調整スキルを学ぶ機会」と捉えることで対応が変わります。
- 癇癪が収まった後の「振り返り」を習慣にする:「さっき何が嫌だったの?」「次は何てったら良かったと思う?」と穏やかに話し合う10分が、感情調整スキルを育てます。
- 「うまくできた時」を記録する:「嫌なことがあったけど今日は言葉で伝えられた」という成功体験を記録しておき、次に「また怒りそうになったとき」に「前にできたよ」と思い出せるようにする。
- 「クールダウン場所」を家庭に作る:感情が高ぶった時に自分から「少し一人になる」場所を作っておく。「ここにいたら落ち着ける」という安全地帯が感情の自己調整に役立ちます。
「ごほうびシステム」は効果があるか
「癇癪を起こさなかったらシールをあげる」というごほうびシステムを試している保護者さまもいらっしゃいます。うまく機能する場合もありますが、注意点があります。
- 「癇癪を起こさないこと」を目標にするより「こう伝えられたこと」を目標にする方が建設的です
- ごほうびへの執着が強いお子さまは「ごほうびがもらえないとわかった時」に新たな癇癪が起きることがあります
- ごほうびは「外部の動機づけ」になりやすいため、長期的には「内発的な動機づけ」(自分でうれしい)を育てることを目指しましょう
iHomeでは個々のお子さまの状況に応じたごほうびシステムの活用についてもご相談に応じています。
iHome 児童発達支援管理責任者(支援経験9年)
放課後等デイサービスの現場で9年間、お子さまの支援に携わってきました。この記事は、現場での実体験と最新の制度情報に基づいて内容を監修しています。




